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 このところ先進的なネット企業の業績に変調の兆しが出てきている。ネット広告を主な収益源とする企業にその傾向が顕著である。

 短文投稿サイトの米ツイッターが4月28日に発表した2015年第1四半期の決算は、売上高が4億3590万ドル(約523億円)となり、前四半期を10%も下回った。閲覧数の伸びが急低下していると考えられ、同社の成長に陰りが出てきたとみる市場関係者は少なくない。

 業績の変調はツイッターだけにとどまらない。グーグルやフェイスブックなど、広告を主な収益源とするネット企業の決算は総じて冴えない。これらの企業は全世界規模で利用者を抱えており、各社の業績推移は、グローバルなネット利用状況の代理変数と捉えることができる。スマホの普及によるネット人口の拡大と、それに伴う広告収入の伸びを前提とした従来の成長モデルは曲がり角を迎えつつある。

 各社は研究開発を加速させ、次のイノベーションを模索しているが、今のところ具体的な成果には結びついていない。今後も急成長を維持できるのか、それとも「普通」の会社になってしまうのか、ネット企業は重大な岐路に立たされていると言えそうだ。

ツイッターの売上高は前期比でマイナスに

 ツイッターの減収は市場にちょっとしたショックを与えた。この決算が発表された当日の米国株式市場では、同社株が一気に売られ、約18%も下落した。

 ツイッターは、広告を主な収益源としており、一般的なウェブサイトにおけるページビューに相当する「タイムライン閲覧数」が経営上、極めて重要な意味を持っている。

 これまで同社のタイムライン閲覧数は、利用者数の増加に比例して順調な伸びを示してきた。昨年の決算で一度だけ、前四半期を下回ったことがあったが、同社は広告あたりの単価を上げることに成功し、売上高の減少を回避している。その後、タイムライン閲覧数は再び上昇トレンドとなったが、このところ、伸び率の鈍化が目立つようになってきた。

 そんな中、最新の数値が注目されていたのだが、何と今回の決算から、タイムライン閲覧数が公表されなくなってしまった。売上高が前期比で10%も下落したという状況を考え合わせると、タイムライン閲覧数が大幅に減少した可能性が高い。

 利用者数が減っていないにもかかわらず、タイムライン閲覧数が減少したのだとすると、サービスの利用頻度が低下したことになる。同社の利用者数はすでに3億人を突破しており、今後、利用者数を急拡大させることは難しい。利用頻度の低下はそのまま同社の収益を直撃することになる。

 同社はまだ赤字決算が続いている状況だが、それが許容されてきたのは、市場が今後の急成長を期待しているからである。同社は年間800億円を超える研究開発費を計上しているが、これは昨年度の売上高の50%近くに達する。売上高が前期比マイナスということになると、こうしたアグレッシブな先行投資も許容されなくなるかもしれない。

スマホシフトがもたらしたもの

 決算に変調が見られるのは、実は同社だけではない。グーグルやフェイスブックなど、広告依存型のネット企業は、程度の差こそあれ、収益の伸び悩みに直面しているのだ。

 ネットビジネスの覇者である米グーグルは、表面上は順調な成長を維持しているように見える。第1四半期の売上高は前年同月比12%増、純利益は同4%増であった。だが、前期比で比較すると、売上高の伸びが鈍化しているほか、研究開発費を中心にコストの増加が目立つ。同社の成長が踊り場に差し掛かっていると指摘する専門家は多い。

 こうした傾向は、同社の収益源である広告の単価やクリック数の推移からも伺い知ることができる。

 同社は、非常に高度な技術を持ったテクノロジー企業だが、収益モデルそのものは非常に単純だ。同社の収益源のほとんどは、検索エンジンに連動する広告となっており、広告のクリック数とクリック単価の積でおおよその売上高が決まる。

 これまで、インターネット広告市場では、スマホシフトによって広告単価が下落するという問題が発生していた。クリック単価の下落は、同社の売上高を減らす要因となるが、一方で、ネット利用者の裾野が広がることによって、市場の拡大も進んでいた。スマホシフトによる単価の減少を規模がカバーしていたのだ。

 ところが、昨年あたりからこの傾向に変化が見られるようになってきた。クリック単価の下落には歯止めがかかったものの、クリック数の伸びが鈍化するようになってきたのである。

グーグルの広告クリック数と単価の推移

 直近のクリック数は、前年同期比で13%の増加となっているが、前期比では1%のマイナスだった。クリック数の減少自体は初めてのことではないが、同社がかつてのような高成長を維持できなくなっているのは確かだ。

グーグルは次のイノベーションに先行投資

 ではこのような現状に対して、グーグルはどう対応しようとしているのだろうか。短期的なものとしては、スマホからの収益拡大策がある。同社は4月21日、ウェブサイトがスマホ対応になっているのかどうかを検索エンジンの評価基準に追加すると発表した。ウェブサイトがスマホ対応になっていない場合には、検索結果の順位が下がる可能性が出てきたことから、EC関連事業者やウェブサイトの運営者は戦々恐々としているという。

 スマホシフトによる市場拡大に限界が見えてきたとはいえ、今後も利用者数の増加が見込めるのはスマホしかない。ウェブサイトのスマホ対応化を強く促すことによって、ネットの広告閲覧を増やそうというのは、自然な流れといってよいだろう。

 当然のことではあるが、これは目先の対応でしかない。ネット市場全体が成熟化しつつある中、ネット利用を飛躍的に伸ばすためには、次のイノベーションが必要となってくる。グーグルは、中長期的には、新しいテクノロジーの導入によって、この問題を解決しようとしている。具体的には、人工知能やロボットを活用したサービスである。

 人工知能を用いたクルマの自動運転が日常的になれば、クルマを運転している時間をすべてネット利用に誘導することができる。またロボットが機械とのインタフェースを担うようになれば、人間が操作するよりも先に、ロボットが利用者の状況を察知して、情報のダウンロードや購買を行うようになるだろう。ターゲット化もより詳細に実施できるので、広告収入の大幅な伸びが期待できる。

フェイスブックも課題山積

 ネットビジネスのもう一方の覇者であるフェイスブックも似たような状況だ。同社の売上高は、前年同期比41%増の35億4300万ドル(約4251億円)だったものの、純利益は20%減の5億1200万ドル(約614億円)にとどまった。人件費や研究開発費が増大し利益を圧迫した。

 同社の利益率が低下した理由は明白である。次の成長フェーズに脱皮するため、先行投資を強化しているからである。

 同社は全世界に14億人の利用者を抱えているが、売上高の半分は米国市場で稼いでいる。欧州を加えた先進国からの売上高比率は75%に達しており、アジアやアフリカなど、その他の地域はほとんど収益に貢献していない。

 ハイペースの成長を維持していくためには、これら非先進国地域での利用を本格化させるとともに、北米市場の広告をさらに強化する必要がある。このため、同社は積極的な買収を行い、研究開発投資を加速させている。

 2012年には写真共有サイト「インスタグラム」を、2014年にはメッセージングアプリを提供する「ワッツアップ」を買収した。また検索機能を強化することなどを目的に、本体の研究開発費を前年同期比で2倍に拡大している。途上国対策としては、インターネットに接続できていない残り50億人の人にネット接続環境を提供するというプロジェクト「Internet.org」をスタートさせた。

 今のところ、買収したサービスは、単体として機能する段階にとどまっており、フェイスブックの利用者を拡大させるマーケティングツールという位置付けにしかなっていない。同社は数年をかけて、統合的な新しいサービスに脱皮させる意向を示しているが、具体的な道筋はまだ見えていない。

カギとなるのは人工知能だが・・・

 一連のネット企業における成長の足踏みと研究開発費の増加は、おそらく偶然ではない。ネットビジネス全体の構造的な変化に大きく関係している可能性が高い。

 インターネットが本格的に普及してからすでに15年以上の歳月が経過している。PCからスマホやタブレットといった具合に、利用するデバイスは変化しているものの、ウェブサイトの閲覧を促すことによって広告収入を得るという基本的なビジネスモデルは変わっていない。

 だが、多くの人がネットインフラを手にした今、従来のやり方に依存していては、劇的な市場の拡大を望むことは難しい。ネット利用のあり方を根本的に変革するようなサービスが登場しない限り、急成長を前提としたネット企業群は「普通の会社」に成り下がってしまうだろう。

 この業界は「次」の時代に向けた移行期に突入しつつあるわけだが、カギを握るのは人工知能やロボットの技術であることはほぼ間違いない。これらの技術をうまく自社のサービスに取り込むことができた企業が、次の時代の覇者となるはずだ。

 今のところ、グーグルは次世代市場への対応においてもっとも有利に見えるが、何が起こるか分からないのがIT業界である。これまで大型コンピュータのパソコンシフトやインターネットの登場など、新しいテクノロジーが登場するたびに主要なプレイヤーも大きく入れ替わってきた。10年後には思いもしない結果が待ち受けているかもしれない。